808コインへの投資判断、あるいは高利率通貨全般へのメモ

理想

Proof of Stakeの仕組みを備えた仮想通貨は、分散ネットワークに参加する各個人の 持ち分に応じて、ブロック生成などの分前が決まってくる。

これが、あたかも銀行にお金を預けておけば増える利息のように作用するのだけど、そうすると高利率を謳った仮想通貨も出てくる。

例えば、808という仮想通貨がそれ。年808%(複利考慮前)というとてつもない高利。

[ANN] <808% apr> Drop the Bass!! 17%+ eligible after 8.08+ days

PCを1年間つけっぱなしにして、808のネットワークに参加をしているだけで、相当額の808コインを手に入れることができる。 例えば、500USD分の808を購入すると、複利を考慮した場合は以下のように増えていく。

約半年で、もし808の価値が変動しなければ、500USDが11,500USD以上に膨れ上がる計算になっている。(上の計算は8.08日のサイクルを9日で近似計算してるので、実際にはもう少し多い)

現実

1. ピークで掴んでいると、利益は出ていない。

808コインを扱っている取引所としては、Cryptopiaがある。ここは、かなりマイナーな通貨を扱っているのだけど、それだけに仮想通貨の色々と極端な実験場になっているといっても過言ではない。

実際に相場を見てみると、この記事の執筆時点(2017/10/22 11時頃)で0.00000017BTCほどで取引されている。

808/BTC Market - Cryptopia

直近の値動きとしては、8月中旬以降に一時盛り上がりを見せて0.00000082BTCまで上昇し、そこから下降中。ちょうど上のツイートがあった頃に需要が膨らんだのかもしれない。ピーク価格で考えるのはちょっと808には不利だけど、2ヶ月で価格が25%くらいにまで落ち込んでいることがわかる。 それでも、先程のツイートで見るとぎりぎり500USDくらいの価値があるように見える。(2ヶ月後の20%と30%の値がだいたい500USDくらいだろう)

f:id:cryptocurrency-phi:20171022113350p:plain

2. 売りたい人が多く、買いたい人は少ない

次に、現時点でどれくらいの需給があるのかについて。Cryptopiaで買いたい人(緑)と売りたい人(赤)の分布を表示すると以下のようになる。

f:id:cryptocurrency-phi:20171022113755p:plain

画像だとツールチップも出ないのでわかりづらいけど、買い注文の総計が10BTC程度。このうち、大半は1satoshi(=0.00000001)付近での注文になっていて、現実的ではない。 それに比べて、売り注文の10BTC付近はちょうど9月のピーク価格付近になっている。

尚、直近の24時間取引量は2.74BTCでした。この値はニュースなどがあると増えるだろうけど、そっと売り抜けたい場合にはそこそこ気になる指標で、個人的にはかなり低い。 いざ大量の808コインを手に入れて、さて売ろうという時、買い手が見つからない可能性がある。

感想

高利率な通貨はインフレを起こしやすい

ということが言えるのではないかと思う。 ETHもProof of Stakeへ移行すると価格が下がるのではないかと危惧する声があるのと同じ。もちろん通貨の価値は発行枚数だけにはあらず、特に技術的な部分も考慮に入れる必要はあるけど、高利率な通貨では、それ相応のインフレを考慮した方が良い。

マルチ商法に似てる?

bitcointalk.orgの808スレッドでも、このコインにはもっと参入者が必要だという声が多いように見えた。つまり、それは先行投資者が新しいカモを探している構図で、参入者が増える(最初にある程度のコインを買ってくれる)と、先行投資してる人たちが売りやすくなる。

参入者が皆大金を得て家に帰ることができるのは、株などの経済成長とリンクする商品だけであって、現状小さな市場を通じて売買が為されているだけの、実際には何にも使えない通貨は、新規参入者が途絶えた時点で、ババ抜きや椅子取りゲームのような結末になるだろう。

補足

ちなみに、808のソースコードMrEggman/808で、この1年全く開発がされていない。 結構な量のコードがbitcoinから流用されているが、bitcoin側の修正ももちろん取り込まれてはいない。 きちんとソースコードを読めば、脆弱性も見つかるかもしれない。